心理学の歴史と分野
キーワード: 心理学は長い過去をもっているが, 短い歴史しかない
アリストテレスが「感覚」,「記憶と想起」,「眠り」,「夢」などを題材に思 索を巡らす
イギリスのロックが「人間悟性論」において白紙説(tabula rasa説)を唱える
フランスのルソーが「エミール」を書き,自然主義教育を提唱
アメリカ独立宣言
フランス革命
大政奉還
ドイツのヴントが世界で最初の心理学実験室を作り実験心理学を興す
ドイツ・オーストリア・イタリアの3国同盟
ロシアの生理学者パブロフにノーベル医学・生理学賞が授与される(条件反射は消化腺に関する研究の副産物として観察された)
フランスのビネーがシモンとともに初めての「知能テスト」を考案
精神分析学を興したオーストリアの精神科医フロイトが「性愛理論への3つの貢献」を著す
大正元年
第1次世界大戦
アメリカのワトソンが乳児に対する恐れの条件付け実験に関する論文を発表
スイスのピアジェが「児童における言語と思考」を出版。幼児の「自己中心性」について説く
世界恐慌
太平洋戦争
19世紀から20世紀の境に,心理学が黎明期を迎えた。心理学は社会的状況の変化に強く影響を受けながら発展してきた。
初期には思弁的・直観的に「心」を実態としてとらえていたが,ヴントは経験できる事柄だけを対象とする立場から,少なくとも当人は直接経験できる「意識」を心理学の研究対象とした。これに対して,ワトソンは意識は主観的だとしてこれを排除し,客観的に観察できる「行動」のみを心理学の研究対象とすることを主張した。現在はワトソンのような極端に厳密な主張は廃れつつあり,様々な指標が用いられるようになっている。
思弁から観察へ,日常的観察から実験的観察へ,主観から客観へ,定性的手法から定量的手法へと方法が変化してきた。近年では,実験で得られたデータを基に仮想的モデルを考え,そのモデルをコンピュータ上のプログラムとして動かすような研究も多くなってきている(e.g., 工学部で行われている人工知能に関する研究プロジェクトと連係することもある)。
精神過程を身体の生理過程とどのように関係させるかは,常に心理学者の課題であった。生理学の発展は心理学の発展に大きく関与している。たとえば,記憶のメカニズムを明らかにするために,遺伝的にヒトと近い動物を訓練して訓練前と後でどの部位が変化するかを調べるために脳を解剖したり,記憶障害をもった患者をfMRIを用いて調査する研究などが盛んに行われている。
人間の心理的能力や傾向が,生まれながらのものか,生後の経験によるものかは常に心理学上の大きな課題であった。前者は「生得説」,後者は「経験説」と呼ばれ歴史的には対立する関係にあった。たとえば,一般に,進化の過程で獲得されてきた種にとって普遍的な特徴は,変えようのない非常記に強い規定条件である反面,発達に対してはある種の一般的な規定条件(制約条件)として機能するだけである。あまりに特殊な制約が組み込まれると,環境が変わったときに,必ずしも種の生き残りに有利ではないからであろう。このような生得的な制約に対して,文化が提供する制約はもっと特殊で弱いものである。たとえば,文化は場所や集団によって異なる特殊な制約条件であるが,そのもの自体は変化していく性質のものであり,また,必ずしたがわなければならないわけではない。ヒトの心の発達を考えるときに,一般的だが強い生得的制約と,弱いが特殊的な制約の組み合わせを考えていく必要がある。
文学部,教育学部,経済学部
工学部,認知科学部,医学部,理学部
様々な分け方があるが標準的には以下のように分けられる。