Piagetによる思考の発達段階説
前提・定理
- 普遍的順序性:
- 全体構造性
- 前後の段階との統合性
- 準備期と完成期
- 均衡状態をもつ
前の段階の操作では対処できないときに,それまで準備されていたものが次の段階で飛躍的に現れる。
記憶表象の変化と思考の変化
- 純粋な記憶力の増大(量的な変化)
- 知識の構造化 (質的な変化)
学習指導要領は、この発達的な変化を前提にして組み立てられている。量的な変化は質的な変化に先立つが、前者の能力は後者に支えられており、両者を明確に区別することは難しい。
注意すべき事柄
- 本当に、発達は年齢に応じて定まっているのか?
- どの発達段階にあっても、その子の「精神構造」に合わせた教育をすればいいだけ?
- 「問題を自力で解く能力」だけで能力を測ってよいのだろうか?
感覚運動期
- 第1次循環反応
-
動作を適応すること自体への興味をもつ。最初に持って生まれた反射
が,刺激から独立した動作(シェム:scheme)になる。
- 第2次循環反応
-
単に動作を適用するだけでは満足せずに,結果に興味を持つようになる。
- 第3次循環反応
-
動作が違うと結果が違うことを理解する。相関関係に興味を持つようになる。
前操作期
- 記憶表象が未発達で,原則として実物しか推論の操作対象にすることができない。
- 時間や空間的な制約に縛られており,言語を用いた思考はまだ不得意。
- 他者の存在は自覚しているが,自分との区別があまり明確ではない(強い自己中心性) 。
- 目の前にある実在物に依拠した推論にしたがう。見た目に大きく影響を受ける。
- 基準にしたがって分類したり並べ替えたりすることが不得意である。
- 対象の永続性といった再認記憶(recognition)が確立される。再生記憶については未発達。
具体的操作期
- 具体物であれば,実在していなくてもある程度の推論を行うことができる。内面化された心的操作を利用できるようになる。
- 他人の心理状態を的確に推測できるようになる。
- 数,量,長さ,重さ,体積,時間,空間などの科学的な基礎概念が獲得される。
- 仮想的な事実についての推論はあまり得意ではない。
形式的操作期
- 具体的操作期では,推論対象が事実に関するものに限られていたのに対して,仮想的事実についても推論することができるようになる。
- 推論の形式や手続きと,その内容とを分離させて考えることができるようになる。
Piaget理論の限界
「逆もまた真なり」,「前提条件が否定されれば,結論も否定されるはずだ」といった,不確かで論理的ではない推論を成人になっても人は信じやすい。(形式的操作期が実在することも怪しいのか?)
たとえば、生徒にとって親しみやすい具体的な事例を持ってくれば、
上記の問題と全く同一の問題構造をもった課題(同型課題)を解くこともできる。
↓
もしかしたら,知識があってはじめて,人間らしい合理的な思考ができるようになるのでは?
↓
ただし,具体的なモノをベースにして問題が解けるようになったからといって,必ずしも規範的な解法が身についたかは不明。
できるようになったからといって,単純に安心してはいけない。