ヒトと計算機の記憶の相違点
--- 短期記憶(Working Memory)と
電気的メモリー(RAM)の違い ---
心的な問題表象の重要性
問題解決を難しくさせる要因の1つとして,不適切な問題空間の表象が挙げられる。
正しい問題空間の表象は,直接的な操作が難しい場合に,更にその重要性が増す。
問題を完全に試行錯誤に基づいて解くことは希で,方略を実際に適用する前にはその方略の善し悪しが心的モデルを通じて吟味される。
イメージと視覚像の類似点と相違点
絵画的特性を強調
- イメージ走査に関する研究
- メンタル・ローテーション
- 拡大・縮小の操作
命題的特性を強調
- 問題解決で用いられるイメージの具象性
- 参照枠の問題と描画精度の問題
- メンタル・アニメーション
多義図形を用いた研究
実験手続き
- この図は「アヒルです…/ウサギです…」と教示する
- 図を隠した後に,図をイメージするよう求める
- オリジナルの図形に対して,DFM(Duck Face Modified)か,RFM(Rabbit Face Modified)のどちらか一方の図を組み合わせてテスト刺激のペアを作成する
- 被験者には,イメージの形成後,すぐに,
DFMペアかRFMペアのどちらか一方の刺激対が再認テスト課題として提示される。
(アヒル教示・ウサギ教示)×(DFMペア呈示・RFMペア呈示)=4条件
実験結果
- アヒルとして提示された場合には,オリジナル図形は知覚的な参照枠の中でアヒルとしてイメージされている。
- そのため,再認課題でもオリジナルの図よりも,RFMの方を誤って選択する。
- 一般的には,
イメージとして見られているその空間的な枠組みの中に限って,
絵画的に走査できると考えるべき描画精度には濃淡が存在し,
新たな参照枠を設定して再描画しない限り,
再解釈することは難しい(FLY→LIFE)
図的表現による情報の外在化
- 強力なイメージ能力を持っていない一般人は,視覚的思考の補助として絵やスケッチを描く必要がある(ワーキングメモリーへの負荷軽減 )
- 言語的表現をとると冗長な表象でも,図を用いると単純明快なものとなる
- 問題文に示された複雑な関係も一度に把握できる
- 問題解決が中断されても再び取り組み直すことが容易である
- 推論の過程での間違いを発見しやすい
- 各推論過程の入れ替えが比較的容易である
代替的モデルとしてのイメージ
当該の問題状況の代替的なモデルとして別の領域の構造を当てはめて考えることは,有効であることが多い。他領域の知識の当てはめは,当該の問題が難しいほど有効性を増すが,モデルの切り替えには困難が伴う。
(例)温度計,ラザフォードの原子モデル,電気回路・水路モデル